“エナジー”は“エネルギー”とどう違うのか。
手元の辞書を開いてみても載っているのは“エネルギー”だけで“エナジー”の記述はなし。両者の違いも載っていませんでした。中には「同じです」としているサイトまで。
ですが“エナジー”の実際の使用例を見てみると、“エネルギー”とは違った使われ方が確かにあります。
“エナジー”とは?
- “エネルギー”と同じ意味
- “生命体が放つ何かしらの力”というニュアンス
- “生命力”や“気”や“オーラ”のような意味で、ファンタジー要素を含む不思議な力
どういうことなのか、身の回りの使用例を整理しながら考えてみたいと思います。
そもそも“エネルギー”とは
辞書の意味を見ると次のようにあります。
エネルギー
①電気やガスなど、人間の日常生活や生産活動に必要な動力資源。
②ものごとをしようとする元気。活力。精力。
③物体がもつ、仕事のできる力。位置のエネルギーや運動のエネルギーなど。
角川必携国語辞典
“エネルギー”も“エナジー”も語源はドイツ語の“Energie”です。読み方が違うだけですが、日本では“エネルギー”と言うほうが一般的です。
Google検索のヒット数で比較してみても、“エネルギー”が約1億940万件なのに対して“エナジー”は約330万件と、その差は歴然です(2023年2月現在)
では“エナジー”はどんな時に使うのでしょうか。
“エナジー”がよく使われる場面
商品ジャンル “エナジー○○”
“エナジー”と聞いて一番に思い浮かぶのは“エナジードリンク”かもしれません。
かつて栄養ドリンクといえばリ○ビタンDなどの医薬部外品が主流でしたが、Red ○ullやMONSTER ○NERGYなどの清涼飲料水が“エナジードリンク”として日本で発売されると人気が爆発。これを機に“エナジードリンク”という名称が一気に広まったような気がします(あくまでも筆者の個人的な体感ですが…)。
ちなみに“エナジードリンク”は法律などでの明確な定義はなく、カフェインやアミノ酸、ビタミンなどの成分が入った炭酸飲料を“エナジードリンク”と称すことが多いそうです(参考 全国清涼飲料連合会Q&A)
その他、“エナジーバー”も最近耳にするようになってきました。
今後も新たな“エナジー○○”というジャンルが増えていくかもしれません。
会社名
電力やガスなどのエネルギー関連企業は“エナジー”と名乗っている所が多い印象です。
大手電力会社の○○エナジーパートナーや、電池の開発販売を手がける○○エナジー(株)、再生可能エネルギー事業を展開する(株)○○エナジーなど。
理由は各企業に聞いてみなければ分かりませんが、グローバルな企業活動が当たり前になっている昨今、“Energy”を英語の発音に寄せたほうが何かと便利だからかもしれません。
他の外来語とセットになった時
他の外来語とセットになった時に、“エネルギー”ではなく“エナジー”と表記する使用例もありました。
- エナジーバンパイア(人のやる気を奪う人のこと)
- ビューティフルエナジー
- エナジーアンプル(美容液など)
“エネルギー”以上の特殊なニュアンスを込めたい文章
なかには、あえて“エナジー”と書く文章もありました。この場合は“エネルギー”の意味を超越した、特殊なニュアンスが付与されている印象があります。
社会を変革する爆発的なエナジーの源泉なのである。
小倉紀蔵『留学の愉しみ 異国の歴史や文化との触れあいを求めて』1997
夏の光のエナジーを吸って燃えるように熟成された真っ赤なトマト。
北嶋愛『Mariage 北嶋愛、フレンチの世界』2002
きっと彼が、残していった作品を通してエナジーを送ってくれているからでしょう。
大下大圓『癒し癒されるスピリチュアルケア』2005
人の情熱、思い、空気感、運気など…生命体が放っている何かしらの力、という感じでしょうか。
漫画やアニメやゲームなど
“エナジー”は昔からファンタジー作品やSF作品などでよく使われてきました。そのせいか、“エナジー”と聞くと漫画やアニメやゲームに出てくる“不思議な力”のイメージがあります。
美少女戦士セーラームーン
筆者がまず思い付いたのは1990年代に一大ブームを巻き起こした『美少女戦士セーラームーン』です(古い…)
主人公の女子中学生たちがセーラー戦士に変身し、人々の生命エネルギーを奪う妖魔らと戦っていくストーリーですが、この“生命エネルギー”を“エナジー”と表現しています。そして強い憎しみは邪悪な暗黒のエナジーを発し、強い愛は聖なる光のエナジーを発するとされています。(参考 ウィキペディア「美少女戦士セーラームーン」)
RPGやファンタジー・SF系漫画の技名など
RPGやファンタジー系漫画において“エナジー”の付く呪文・技・アイテムはかなりの数があり、生命力や気やオーラのようなニュアンスで使われたりします。下のサンプルはざっと拾ってきた一例です。
- RPG『Wizardry』『FINAL FANTASY』『真・女神転生』『ロマンシングサガ』…エナジードレイン、エナジーストームなど
- 『遊戯王OCG』…サウザンドエナジー、ソウルエナジーMAX!!など
- 『ポケットモンスター』…メガエナジー、エナジーボールなど
- 『ドラゴンボールヒーローズ』…ヒーローエナジー
- 『モンスターストライク』…エナジーソード
- 『ウルトラマン』…エナジーコア(エネルギー残量を示すカラータイマー)
『Wizardry』1作目では経験値を吸い取ってしまう敵の技「エナジードレイン」が登場しました。この作品が日本で発売されたのは1985年ですから、“エナジー”はゲーム内で古くから親しまれてきた言葉だったことが分かります。
“エナジー”と聞くとファンタジー系を強く連想させるのは、これが理由かもしれません。
最後に “エナジー”と“エネルギー”の使い分けに注意
“エナジー”は“エネルギー”と共通する部分もありますが、ニュアンスが異なる部分もあるため状況に応じた使い分けが必要です。
特に、生命体の放つ力や、不思議な力、という意味では“エナジー”と言ったほうが雰囲気を崩さずに表現できるかもしれません。
とはいえ言葉に“絶対”はありません。前後の文脈やその場の状況によっても変わりますし、使われ方も時代とともに変化していきますので、柔軟に向き合って考えていきたいと思います。