映像翻訳の道に入って6年。あるとき「大変かもしれないけど挑戦してみよう」と“少し背伸びをした”翻訳生活を送っていたのですが、途中で心身ともに体調を崩してしまい、「何もしたくない」と半ば病むような状態になってしまいました…。
このまま続けても行き詰まると思い、健康を整えてから再出発しようと決意。しばらくお休みをいただきました…
しっかり充電して、今は元気に過ごしてます!
翻訳生活の中で、何が体調を崩す原因になったのか、私のケースを率直に打ち明ける思いで書いてみたいと思います。
1 希望のライフスタイルと仕事量が合わなかった
簡単に言うと、キャパ以上の量を受けてしまった、というのが病んだ一因です。
未就学児のいる我が家では、子供が保育園に行っている日中のみが作業できる時間でした。
私の生活はというと、朝、子供を保育園に送り出して仕事をし、夕方6時にお迎え。夜は夫と協力しながら食事、風呂、寝かしつけ。「夜少し作業できたらいいな」という願いもはかなく、子供の寝かしつけで自分もすやすや夢の中へ(ここで起きるのが本当につらい!)。寝入った子供が「ママぁ~~~~」と起きてくれば寝かし直すことも。何だかんだで夜は思いどおりに作業できませんでした…。
土日祝日は基本的に保育園に預けられないので家におり、「ママ~いっしょにあそぼ~~」とドカドカ仕事部屋に来るので作業はできず…。夫も平日働いていて土日は疲れているので、子供の世話を任せるのは酷なものがありました。
そんな状況でも、それまでは何とかやりくりできていたのですが…。
その年は新たな翻訳会社と契約を結び、たまたま一発目に頂いたのが「あああああっ!」と叫びたくなるような手間のかかる番組でした。
何回分か翻訳して納品したあと、担当者を増やすなどのサポートをお願いしてスケジュールにゆとりを作ってもらいましたが、それでも平日の仕事だけでは追い付かず、土日もギリギリの作業を続けました。
いつしか、私の仕事時間を確保するため、夫が土日に娘を外に連れ出すのがルーティーンに。本当によく協力してくれてありがたかったのですが、夫にも娘にも申し訳なく、心苦しさが常にありました。
仕事もいろいろと調整してみたものの、家族との時間も大切にしたかった私にとっては苦しい仕事量でした。
子供も小さく、だいぶ手が掛かりました…
「子供の成長をもっと見守りたい!」という気持ちもありました
2 報酬金額が低かった
上記1のような苦しい働き方に追い打ちをかけたのが報酬金額の低さでした。
サクサク進む番組であればよかったのですが、毎回のように多分野にわたる調べ物があり、遅々として進まず…。
作業中も「これだけ頑張っても結局〇〇円しかもらえない、報われない」という思いが常に頭にありました。
苦手な単価交渉もしましたが、上がったのは1割ほど。さらに交渉を続けたとしても労働量に見合う金額になるのは望み薄でした。
「もう少し頑張れば事態が変わるかもしれない」と望みをかけて6カ月間 何とか続けましたが、体力・気力ともに限界へ。
最後には「いくら積まれても、もうやりたくない」と感じるようになっていました。(←危険!)
このまま急にパタッ!と倒れたらそれこそ多くの方の迷惑になるため、自分の体調や家族の状況などを踏まえて翻訳会社の方に事情を話し、最終的に別の方に引き継いでいただきました。
翻訳へのモチベーションも失っている自分に気付き、英気を養うためにしばらくお休みすることにしました。
世の中お金が全てじゃないけど、“安いカネで働かされている”という思いは、ボディーブローのように効いてきました…
3 もやし生活
引きこもり・座りっぱなし・運動不足という最悪の生活を送っていました。
もともと出不精ということもあり、締め切りに追われていた頃はほとんど家を出ませんでした。買い物も夫に頼んでいて、かろうじて外に出るのは保育園の送り迎えのみ(片道5分)。
家の中でも椅子に座りっぱなし。あれやこれやと調べ物をしたり考え事をしたりしているうちに一日が終了。運動する余裕もなく、1日100歩 歩いたかどうか怪しい日も。
日の光もほとんど浴びず、部屋の中でせっせとパソコンに向かう日々。
個人的には全く苦にならない生活スタイルでしたが、日を追うごとにさまざまな体調の変化を感じました。
体力が低下し、体が痛み始める
出歩かなくなったことで体力が一気に落ち、疲れやすくなりました。
脚の筋肉が弱ったことで、膝や腰まで痛むように。
また体幹も弱くなったため、椅子に座って姿勢を保つことさえ苦に感じるようになりました。
胃もたれ、吐き気、便秘
一日中動かない生活で、胃腸の働きも悪くなりました。
もともと胃が強くない私ですが、引きこもり生活が続くと胃もたれが頻発。夕方になると「あ゛あ゛あ゛あ゛気持ち悪い」と言いながら太田胃散をかっ込み、炭酸水で紛らわす日々。
強炭酸水を箱買いしておりました。
ゲップを出せると少し楽になるんです…ゲプ
また便秘に苦しみ、腹痛や嘔吐で死に体状態になることも。
胃腸が丈夫な人には縁遠い悩みかもしれませんが、私にとっては死活問題でした。
全てに対する気力が失われていった
生活を楽しむ余裕がなく、徐々にゾンビのような、生きる気力のない自分を感じました。
何もしたくない…趣味だったゲームさえやりたくない…何をしても楽しくない…
あとで調べると、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの分泌量が減るとうつ症状が出やすくなるそうで、セロトニンを増やすには日光浴が手っ取り早いとのこと。
私の引きこもり生活は、順調に(?)セロトニン不足を育んでいたようです。
孤立していった
締め切りに追われ余裕のない生活を送ってしまったことで、友達と会ったり、遊びに出かけたりすることもめっきり減りました。
買い物にも行かなくなり、誰かに会うこともほとんどなくなりました。
もともと人との交流が不得手なほうですが、人に会わない生活が続くなかで、外に出ることに不安を覚えるようになりました。
どうすれば防げたのか
以上のような不健康生活で見事に病んだ私ですが、どうすれば健全な翻訳ライフを送れたのか考えてみました。どれも少なからず病むリスクを下げる対策になるはずです。
1 自分のキャパに合う適切な仕事量を受ける&正直に相談する
自分がどれくらいこなせるのか適切な作業量を知り、翻訳会社とよくすりあわせをすることも必要ですし、やってみて「事前に聞いてたよりも作業量が多いぞ」と思ったら正直に相談することが大切だと思いました。
私の場合は新規契約の会社だったということもあり、「少し無理をしてでも頑張ろう」と思って続けていたのですが、最後はコンディションをキープするのが難しくなってしまいました。
多少の背伸びは必要な時もありますが、それが続くとガタが来ることも。
仕事も大切だけど、自分の健康を守れるのは自分だけ。
やはり無理は禁物だなとしみじみ感じました。
2 より高い報酬金額になるよう努力する
体調を崩して改めて気付いたのは、お金は「自分のことをどれだけ認めてくれているのか」という客観的な評価だということです。
私の場合は「こんなに頑張ってもこれしかもらえない」という報われない悲しみが自分に追い打ちをかけ、「私は何のために働いているんだろう」という感情が精神をむしばんでいきました。もし高単価であれば「大変だけど、それだけ報酬がもれえるから頑張ろう」と病まずに踏みとどまれたかもしれません。
ガツガツとお金の話をするのは正直気が引けるのですが、これも自分の健康のため。
高単価契約を目指して交渉や新規開拓に努めるのは、健康的に翻訳を続けるために必要なことだと痛感しました。
3 1日1回は外に出る&適度な筋トレをする
精神的な健康を保つためには外に出て日光を目に入れ、軽く歩くなどが有効だそうで(オムロン「リズム運動でメンタル強化を」)、確かに実践できた日はメンタルが安定していたように思います。
また一時期は膝や腰の痛みがひどかったのですが、私の場合は筋トレを始めると痛みも消え、体力も付いて、日々の生活が充実するようになりました。(任天堂Switchの『リングフィットアドベンチャー』をしています。在宅ワーカーにオススメ♪腰痛などの改善は個人差があります)
外に出る時間もついつい惜しみがちな私ですが、未来の自分のために、ムチを打ってでも実践すべき項目だと胸に刻みました。
最後に
「何のために仕事をするのか」
今回はそれを考え直し、再出発を果たすターニングポイントになりました。
仕事に振り回される人生じゃない、豊かな人生を楽しむための仕事として突き合っていく。健康第一で私らしく頑張っていきたいと思いました。
働き方は人それぞれ。お読みくださった皆様も、自分らしい働き方で、すばらしいお仕事ライフになりますように!